「そろそろ家を買いたいけど、何から始めればいいの?」
そんな声を、不動産営業を8年やっていると本当によく聞きます。住宅購入は一生に一度か二度の大きな決断。なのに、スタート地点から不安だらけという方がほとんどです。
この記事では、初心者の方でもわかりやすいように、「最初に考えるべきこと」から「引き渡し後に気をつけること」まで、ステップごとに整理してご紹介します。
目次
1. 資金計画・予算の考え方
最初に今日の記事の結論から入ります。
結論:失敗しない住宅購入は必ず資金計画を立てるところから始めましょう。
物件情報を探して良い物件に巡り会えたとしても、適切な資金計画が立てられていなければ購入自体が難しくなってしまうかもしれません。
もしうまく購入できたとしても、将来支払いに困ってしまっては元も子もありません。
なので、住宅購入を検討する場合、まずは物件ではなく、適切な資金計画を立てることが第一優先です。
■ 年収別の購入目安と現実的な予算感
住宅価格の目安として「年収の5~6倍以内」と言われることもありますが、”本当に見るべきは“返済比率”です。
返済比率とは?
返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合のことです。
一般的に、住宅ローン審査において、年収に対して返済可能な計画になっているかを判断するために重要視されます。
例えば、年収500万円で、年間返済額が200万円の場合、返済比率は40%(200万円 ÷ 500万円 × 100)になります。
一般的には、年収の30~35%以下が目安とされていますが、金融機関によって基準は異なります。
返済比率が高いほど、毎月の返済額が増え、家計に負担がかかる可能性があるため、無理のない範囲で返済計画を立てることが重要です。
住宅ローンだけでなく、自動車ローンやクレジットカードのリボ払いなど、他の借入も合算して計算します。
返済比率を計算する際に、年収は税引き前の額面年収を使用します。
返済比率を参考に、無理のない借入額を設定し、安定した返済計画を立てるようにしましょう。
金融機関が住宅ローンの審査をする際には30%〜40%を返済比率としてみることが多いですが、実際に支払いを続けていくことを考えると住宅ローンは手取り月収の30%以内が理想と言われています。
年収500万円の方なら、住宅ローンは月々10万~11万円が無理のない返済ラインです,
年収 | 借入目安(安全圏) | 月々の返済例(35年) |
---|---|---|
400万円 | ~2,500万円前後 | 約6.5~7万円 |
500万円 | ~3,000万円前後 | 約8~9万円 |
600万円 | ~3,500万円前後 | 約9.5~10.5万円 |
■頭金ゼロでも住宅は買える時代。その上で知っておきたいこと
最近では、多くの金融機関が「頭金ゼロ(フルローン)」に対応しており、自己資金が少ない若い世代でも住宅を購入することが可能になっています。
実際に、初めてのマイホーム購入でフルローンを選ぶ方も増えています。
特に今はまだまだ金利も低めの水準で安定しており、「家賃と同じくらいの返済額」で戸建てに住めるケースも多いため、若いうちから住宅購入を検討する価値は十分にあります。
ただし、自己資金ゼロの状態での購入にはリスクも伴います。
たとえばリストラや病気といった万一のときの備え、住宅の維持にかかる固定資産税や修繕費の存在を見落としがちです。
そのため、理想としては「諸費用(物件価格の6〜8%)」に加えて、予備費として100万円以上は確保できると安心です。
とはいえ、準備が難しい場合でも、将来的な収支計画や生活費の見直しを工夫することで、フルローンでも無理なく生活できる人も多くいます。
大事なのは、頭金の有無よりも、”返済計画が生活にフィットしているか”です。
コラム:さとるの独り言
私自身も26歳で住宅を購入したときは貯金もほとんどなかった為、諸経費を含めたフルローンを組みました。
実際には契約時に手付金は一度現金で払う必要があるものの、実質手出しゼロで住宅を契約しています。
2. 住宅ローンの基礎知識と落とし穴
■ 固定金利と変動金利、どっちがいい?迷った時の考え方
住宅ローンを選ぶとき、多くの人が悩むのが「固定金利にするか、変動金利にするか」という問題です。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、「自分のライフスタイルに合った方」を選ぶことが大切**です。
変動金利とは?
-
借入時の金利がとても低く、月々の返済負担が軽いのが魅力。
-
ただし、半年ごとに年2回金利の見直しが行われ、将来的に金利が上がるリスクがあります。
✅ 注意すべき「5年ルール」と「125%ルール」
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5年ルール:返済額の見直しは5年間に1度しか行われない(途中で金利が上がっても支払いは据え置き)
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125%ルール:返済額の上限は前回の1.25倍まで(急激な増額は回避される)
一見安心なルールですが、「元本がなかなか減らない」可能性があり、総支払額が想定以上になるリスクも。
※金融機関によっては上記ルールの適用がないところもございます。
固定金利とは?
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契約時の金利が借入期間中ずっと変わらないタイプ。
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フラット35などが代表的。
-
将来の金利上昇リスクがないため、家計の見通しが立てやすく、安心感が大きい。
- 金利は変動金利に比べ高い
初期の金利は変動より高いですが、「金利が上がっていくかも…」という不安がないのが最大のメリットです。
どちらがいいかは「金利」よりも「生き方次第」
選び方の視点 | 内容 |
---|---|
📉 変動金利が向いている人 | 収入に余裕があり、万が一の金利上昇にも耐えられる。短期間での繰上返済を考えている。 |
🔒 固定金利が向いている人 | 家計に余裕が少なく、子育て・教育費など出費が増える予定がある人。長期の安心を重視したい人。 |
また、今は固定金利と変動金利を混ぜたハイブリット型の金利を選択する方もいます。
目先の数字より、「10年後の自分」を想像しよう
「今、金利が低いから…」で変動を選ぶのも、「安心感がほしいから…」で固定を選ぶのも間違いではありません。
でも一番大事なのは、“今後の生活がちゃんと回っていくか”です。
ローンの選択に正解はありませんが、あなたの「暮らし」に無理が出ない選択をすれば、それが正解になります。
■ 住宅ローン「事前審査」と「本審査」の違いとは?
住宅ローンの申し込みには「事前審査(仮審査)」と「本審査」の2段階があります。
どちらも大切ですが、それぞれの役割と通過の意味を正しく理解しておかないと、「買いたい家が買えなかった…」という事態にもなりかねません。
「事前審査(仮審査)」とは?
- 住宅ローンを組めるかどうか、金融機関が簡易的にチェックする第一ステップです。
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審査内容は主に「年収」「勤続年数」「雇用形態」「信用情報(過去の借入履歴)」など。
-
提出書類も比較的シンプル(源泉徴収票、本人確認書類など)。
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本命の物件が決まる前に通しておくのが一般的です。
✅目的は「この人は、ある程度問題なくお金を貸せそうか」を判断すること。
「本審査」とは?
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実際に購入する物件が決まった後に行う、正式な審査です。
-
ここでは提出書類が一気に増えます:
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売買契約書
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物件資料
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所得証明(課税証明書や住民税決定通知書など)
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など
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金融機関や保証会社が、勤務先・勤続年数・家族構成・他の借入状況まで細かく確認します。
✅ この時点で「ちょっと条件が変わった」「他の借入が見つかった」などの理由で審査落ちになることも。
コラム:さとるの独り言
金融機関にもよりますが、私が担当したお客様では事前審査が通って本審査が通らなかった方は今の所いらっしゃいません。
事前審査でもある程度しっかりと情報を審査する金融機関が多いので、本審査で落ちることは多くはありません。
ただし、実際に事前審査の後、本審査前までに条件が変わってしまって(新たに車のローンを組んでしまった、転職をしてっしまった)などで本審査が通らない方もいるので、気をつけたいポイントです。
3. 物件探し・内見のポイント
■ 希望条件を“優先順位”で整理
「駅近・築浅・広さ・予算・日当たり・学区」など、理想を挙げればキリがありません。
ポイントは、絶対に譲れない条件を3つまでに絞ることです。
100%理想の物件が存在すれば良いのですが、まず見つかることはありません。
家族みんなで条件を絞り込み、その条件を満たしていて且つ6割納得できる物件は”買い”物件だと思いましょう。
■ 内見時に見るべきポイント
-
日当たり、風通し、近隣との距離感
-
周囲の交通騒音、匂い、ごみ置き場の状態
- 建売で見落としがちなのがコンセントの位置
内見はできれば平日・週末・昼・夕方、晴れの日と雨の日。現地の空気感は、写真や図面ではわかりません。
■ 複数比較が必須
不動産は水物なのでいつ売れてしまってもおかしくはありません。
焦る気持ちもわかりますが、最低でも3~4件は内見し、「比較」した方が良いです。
比較対象があって初めてその物件の良さや欠点が見えてきます。
ただ、あまり見すぎると”次にもっと良い物件が出てくるのでは?”と疑心暗鬼になって買えない人になっていってしまいます。
見ても5件前後がベストです。
”もっと見たほうがいいのではないか”と心配になるかもしれませんが、内覧までに資金計画や条件整理をしっかりと行なっておくと、実際に見るべき物件はかなり絞られているはずなので、問題ありません。
そこが決め時です。
コラム:さとるの独り言
私の不動産営業の経験の中でも物件を見すぎて住宅を購入できなくなってしまった人を”何人も”見てきました。
3年も4年も長い方だと10年近く探している人もいました。
そんな方が1人2人ではありません。”何人も”です。もっといい物件は出てきません。今あるものが最善です。
物件見学が趣味なら良いと思います。失敗を恐れる気持ちもわかりますが、住宅購入は手段です。実際に住んで生活していくことが目的のはずです。
住宅購入の本来の目的を見失わないようにしましょう。
4. 契約・手付金・諸費用の確認事項
■ 契約時に支払う「手付金」はなぜ必要?金額の目安と注意点
住宅の売買契約では、「手付金(てつけきん)」というお金を契約時に売主へ支払う必要があります。
この手付金は、“契約を成立させるための意味”があると同時に、万が一のトラブルやキャンセル時に関わる重要なお金でもあります。
そもそも「手付金」とは?
手付金とは、住宅購入の売買契約を結ぶときに、買主が売主に対して支払う一時金です。
このお金は、「本気で買いますよ」という意思表示であり、売買契約の成立を示す証拠でもあります。
また、万が一契約後にキャンセルをすることになった場合の”解約手付”ともなります。
手付金の金額の目安
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一般的には物件価格の5~10%程度が目安
-
例:3,000万円の物件 → 手付金150万〜300万円
-
実務上、私の担当するエリアでは50〜100万円のことが多いです。
-
-
契約書に「〇〇万円」と明記されます。
✅手付金は、最終的には物件価格の一部に充当されます(別払いではありません)
手付金のルール
手付金には「解約手付」の性質があります。つまり、売主・買主のどちらからでも契約を解除できるけれど、そのときのルールがあるということです。
買主の都合でキャンセルするとき
-
支払った手付金は戻ってきません(没収)
売主がキャンセルしたい場合
-
売主は、受け取った手付金の倍額を返して契約解除できます
✅ただし、引き渡し日が近づくと「手付解除の期限」を過ぎるため、キャンセルができなくなるケースもあるので要注意!
手付解約の期限は契約書に記載されますので、しっかりと確認しましょう。
コラム:さとるの独り言
契約直前まで悩んでいる方には、「気持ちが固まってから契約に進みましょう」とお伝えしています。
申し込みまでは法的拘束力がありませんが、契約書にサインして手付金を支払ってしまうと、簡単には後戻りできなくなるからです。
「手付金」はただの前払い金ではない
ポイント | 内容 |
---|---|
金額目安 | 物件価格の5〜10% |
役割 | 契約の証拠金・買う意思表示 |
キャンセル時 | 買主→返金されない、売主→倍返し |
注意点 | 「手付解除の期限」に要注意! |
住宅購入の手続きは、契約からすでに重要な判断の連続です。
だからこそ、お金の意味を正しく理解して、納得したうえで次のステップに進むことがとても大切です。
ちなみに、手付金は契約時に現金、もしくは振り込みで支払います。
一旦必要なお金ですが、住宅ローンで借り入れることも可能です。
■ 契約時に見落としがちな「諸費用」って?住宅購入以外にかかるお金
住宅を購入する際、多くの方が「物件価格」だけを見て予算を組んでしまいがちです。
しかし実際には、契約時や引渡しまでにさまざまな“諸費用”が発生します。これを見落とすと、後から「予算が足りない…」と焦ることにも。
諸費用の内訳と金額目安
登記費用(登録免許税+司法書士報酬)
-
土地・建物の所有権移転登記などに必要
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金額目安:10〜45万円前後
- ローンを借りるかどうかにっよっても金額が変わる
- 新築の場合はさらに表示登記費用約10万円
火災保険料・地震保険料
-
金融機関のローン審査条件に含まれることが多い
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5年間一括払いが一般的(※任意で内容調整可)
-
金額目安:10〜30万円
仲介手数料
-
不動産会社を通して物件を購入する場合に必要
-
上限:物件価格×3%+6万円(+消費税)※400万円越えの取引の場合
-
例:3,000万円の物件 → 約105万6千円が上限
銀行事務手数料・保証料
-
住宅ローンを組む際の各種手数料
-
金額目安:70万円前後※3000万円の借り入れの場合(金融機関による)
引越し費用・家具・家電購入費
-
家族の人数や距離によって異なるが、数十万円は見込んでおくべき
-
ソファ・カーテン・冷蔵庫・エアコンなどは意外に高額!
合計で「物件価格の6〜10%」は見込んでおこう
項目 | 金額目安 |
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登記費用 | 10〜45万円 |
火災・地震保険 | 10〜30万円 |
仲介手数料 | 最大105万6千円(例:3,000万円の場合) |
銀行手数料・保証料 | 約70万円前後 |
引越し・家具 | 20〜50万円(家庭による) |
✅ 3,000万円の物件なら、合計で180万円〜300万円ほど必要になるのが一般的です。
コラム;さとるの独り言
家を買う=物件価格だけじゃない。
「住み始めるまでにいくら必要か?」を最初から計画に入れておくことで、焦らず安心して購入手続きを進められます。
また、多くの金融機関では諸費用も住宅ローンで借り入れが可能なので、不動産の営業やエージェントに確認してみましょう。
諸費用は“後から”ではなく“最初から”考える
ポイント | 内容 |
---|---|
見落としやすい費用 | 登記・火災保険・仲介・銀行手数料など |
必要予算の目安 | 物件価格の6〜10% |
対策 | 最初から総予算として見積もっておく |
■ 引き渡しまでの流れ
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契約
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ローン本審査
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金消契約(ローン契約)
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残代金決済・引渡し
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入居・登記・各種手続き
スケジュール管理を怠ると、引渡しがずれ込み、仮住まいが必要になることも。営業と密に連携しましょう。
5. 入居後のトラブル防止策
家を買うとき、多くの人が「価格」や「立地」「間取り」ばかりに注目しがちですが、**実は見逃せないのが“近隣住民との相性”**です。
どれだけ立派な家でも、近隣トラブルがあると住み心地は一気に下がってしまいます。
■近隣住民で実際に起こりがちなトラブル
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毎晩の騒音(楽器・子ども・車の出入り)
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ゴミ出しのルール違反
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境界線や駐車場をめぐるトラブル
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町内会・自治会トラブル
こうしたトラブルは、一度起きると簡単には解決しづらく、精神的なストレスにも繋がります。
購入前に営業担当に必ず確認しておくべきこと
不動産の営業担当に、以下のような質問をしておくと安心です:
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このエリアにはどんな年齢層・家族層が多いか?
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近隣で過去にトラブルやクレームがあったか?
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両隣や前後の家族構成は?(子ども、高齢者など)
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騒音・路駐・ペットなどの苦情歴は?
全て完璧に把握することは難しいかもしれませんが、可能な限り確認してみましょう。
購入前に「ご近所さんが良さそうか」は実際に現地に足を運び、曜日・時間帯を変えて雰囲気をチェックすることも大切です。
実際に自分の目で見るべきチェックポイント
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平日と休日の雰囲気(騒音・人通り)
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ゴミ集積所の清掃状況(住民のモラルが分かる)
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子どもの遊び場や路上駐車の有無
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「こんにちは」と声をかけたときの近隣住民の反応
住宅は“建物”だけでなく“周囲の人間関係”も含めての「環境」です。
コラム:さとるの独り言
家の見た目は変えられても、隣人は変えられません。
住宅購入では、「隣が誰か」も立地と同じくらい大切です。
気になる物件があったら、現地見学の際に時間帯を変えて2~3回足を運ぶことをおすすめします。
新築戸建てだと数棟で分譲している分譲地を検討するのもいいかもしれません。
古い住宅街にポツンと一軒新しいお家に入居するよりも大型分譲地だと大体同じくらいの世代で子供も同じ小学校なんてパターンが多いので、安心感があります。
もちろん他人のことなので一概には言えませんが、選択肢としてはありかと思います。
住んだ後に「知らなかった…」では済まされないのがご近所問題。
だからこそ、購入前のひと手間が、安心して長く暮らせる家選びに直結します。
まとめ|「何から始めるか」が家選びの成否を分ける
今回は私の購入体験も交えながら失敗しない住宅購入についてみてきました。
営業として数百組のお客様を見てきた中で感じるのは、「しっかり準備した人は、ほぼ後悔していない」ということ。
本記事が、あなたの「はじめてのマイホーム購入」の一助になれば嬉しいです。
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